政府が生命保険料控除の拡充を検討!

保険

 2023/12/4の新聞各社の記事で、生命保険料控除の拡充が検討されている報道が出てきました。業界に精通していない方々からすると、急に降ってきたような話ですが、実は以前から検討案というものは出されていました。

 金融庁が8月に発信している「令和6年度税制改正要望について」では今回の検討案の原案がすでに示されており、この要望案には、管轄している生命保険業界の業界団体の要望をくみ取った面ももちろんあるでしょう。与党、政府も献金を受け取っている以上、業界団体の要望を無下には出来ません。まだ検討段階ではありますが、改正される可能性が高いでしょうね。ここでは、どんな内容で検討されているのかみていきましょう。

生命保険料控除の拡充案の中身について

 まず、改めて金融庁の「令和6年度税制改正要望について」を見返してみると、遺族保障や教育費の備え、私的保障、私的年金の役割の重要性に書かれています。要するに人生100年時代となり、政府の公的保障には年金、公的医療保険も改悪が進む中で、予算的にも限界がありますから自助努力による保障を推奨しているわけですね。ここは、業界団体の要望が本音だとしても金融庁の問題認識として嘘偽りないでしょう。

 ただ、項目1「産所得倍増プラン」~、項目2「世界・アジアの国際金融ハブ」~と比べてページ数が少なく、明らかに熱量の置き所がわかるようになっているのはもう少しどうにかならなかったのかと思いますが(笑)。保険の要望案は1ページのみと、わかりやすすぎるだろ金融庁・・・。

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  とにかく我々国民としては減税幅の拡充につながる案になりますので、使えるものは使っておきたいですね。ここで、内容を見ていきましょう。

 2012年より前の契約の保険料控除については語るとややこしくなりますので、現状の保険料控除で説明がありますが、以下の3種類に分かれています。

  • 一般生命保険料控除=死亡保障のある生命保険
  • 介護医療保険料控除=医療保険等の、疾病・ケガ・就労不能等の保障で死亡保障のない生命保険
  • 個人年金保険料控除=政府が定義する個人年金の定義を満たす積立型の貯蓄性のある生命保険

 それぞれこのようなくくりで分かれておりますが、それぞれ、8万円/年以上の金額を支払えば控除上限となり、最大所得税の所得控除額が12万円、住民税の控除額が7万円まで年末調整で帰ってくる仕組みとなっていました。所得控除とは、要するに自分の収入から経費等を差し引いて税率をかけて所得税・住民税を支払う必要があるのですが、経費にしていいよ、といっていると思ってもらえれば近いです。 

 所得に応じて税率が変わり、所得の高い人ほど高い税金を払うわけですが、所得税率が20%の人であれば12万円×20%は年末調整で返ってくることになります。住民税は基本的には一律10%の税率となりますので、7万円×10%が戻ってくると思ってください。

 現在はそれぞれの枠で保険料を8万円/月以上払うとそれ以上には税制の優遇はないよ、という制度だったのですが、この上限を増やすというのが今回検討中の改正案となります。子育て世帯と、非子育て世帯では死亡保障の必要性が違うという配慮から、子育て世帯では一般生命保険料控除の上限(所得税)を6万円、非子育て世帯は現状の上限(所得税)の4万円とする要望が出ているようです。

 また、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除については多少拡充して上限4万円→5万円(所得税)とそれぞれ拡充を要望しているようですね。今まではそれぞれの枠で8万円/年の保険料を払い込めば保険料控除の枠を上限まで使うことができたのですが、そこについての言及は特にありません。ですが、この要望通りの改正となればおそらく払込保険料の上限金額も合わせて上がるのではないでしょうか。

 今の比率に合わせていくとすれば、子育て世代は死亡保障タイプの生命保険については、12万円/年(1万円/月)、介護医療保険、個人年金については10万円/年の支払いで所得控除の上限まで利用が出来そうです。

 世帯で考えた場合には、すでに上限以上に保険料を納めているケースも多いのではないでしょうか。その場合は純粋に多少なりとも減税となりますので、メリットのある話になりそうです。新規加入や見直しの際にも保険料控除を一つの目的として保険に加入したいというケースもありますから、悪い話ではなさそうです。

 終わりに

 検討中の改正案について、簡単に綴ってみましたがまだこの通りになるとは限りません。岸田政権の提唱する「異次元の少子化促進対策」の一環として整備されるでしょうから多少修正が入る可能性もあります。

 ただし、あくまで必要保障はそれぞれの個人、家庭によって変わりますので、これを目的に金額を調整するというよりは拡充によって税制優遇の幅が広がったと受け取るのがいいのではないかと思います。特に高収入の家庭ほど公的な医療保障を利用したうえでの自己負担額は大きく、必要な死亡保障金額も大きくなるのが一般的ですので、高税率の課税を保険料控除で補うメリットがあり、利用価値が高そうです。 

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