こちらの記事ではどんなものに維持費がかかるか見てきましたが、これらを今度は具体的に計算していきましょう。とはいっても、個々の住宅や、新築・中古でも金額は変わってきます。築年数で修繕積立金も変わりますし、支払う税金や控除可能な税金が変わってくるためです。前提条件を置いて計算していきましょう。
- マンションの一戸室(70㎡)
- 購入金額5,500万円(土地1,500万、建物価格4,000万円)
- 認定長期優良住宅ではない
- 固定資産税の計算の基礎となる固定資産税評価額は土地は売買価格の7割、建物は5割と想定
以上の条件で考えて行きたいと思います。認定長期優良住宅については、別記事でも挙げようと思いますが、認定された住宅を購入した場合、住宅ローン控除の優遇や固定資産税の優遇期間の延長、耐震等級の付与による地震保険の優遇など色々優遇措置があります。ただし、あまりこれを満たすマンションはあまり多くありませんので、こちらについては除外して考えていきます。
管理費・修繕費については管理組合の規約に従って個別のマンションでまるで変っていきますが、ここでは具体名は出しませんが、私が手元に持っている情報の実例に沿って作成していきます。
また、固定資産税評価額は、土地については一般的には実売価格の7割程度になると言われています。建物についてはその建物を再建築した場合にかかる、再建築価格の5~7割程度になると言われており、通常建築価格に建築会社の利益が乗りますから、ここでは4割として計算していきます。正確な固定資産税評価額が知りたい場合は、年に一度送られてくる納税通知書もしくは役所で固定資産課税台帳を閲覧できます。
それぞれの維持費をシミュレーション
管理費
管理費については個別の管理組合の規約に従いますが、規約が変更されなければ基本的には変わることはありません。一般的にはマンションに色々な設備が充実しているほど高くなります。実例を元に見ていくと、
管理費=14,400円/月
住宅ローン以外に毎月支払う費用として掛かっていきます。
修繕積立金
修繕積立金は、一般的には10年単位でマンションの外壁修理など、大規模修繕計画を行うために積み立てられます。こちらについては当初の金額から年数に応じて金額が増額されていくマンションがほとんどですね。こちらも実例にそって見ていくと、
修繕積立金=8,000円/月
当初はあまり大きな金額ではありませんね。ただし、この実例を元に考えると、30年の修繕計画を元に5年ごとに30%ずつ増額していく計画だそうです。それを計算に入れていくと、
1年目~5年目 8,000円/月
6年目~10年目 10,400円/月
11年目~15年目 12,800円/月
16年目~20年目 15,200円/月
21年目~25年目 17,600円/月
26年目~30年目 20,000円/月
どうでしょう、当初と比べると2倍以上の金額になってしまいました。これは段階増額方式という方法で修繕積立金を徴収する方式をとっているのですが、当初は修繕積立金が一律の方式より安いのがメリットですが、築年数と共に負担が増えていきます。当初の金額で計算していた家庭があったとすると、かなり負担になってきてしまいますね。この時点で、当初の管理費・修繕費22,400円/月は34,400円/月まで上昇してしまいました。
31年目以降はどうなるのかは未知の部分です。マンションの劣化具合や、台風等の環境による影響、修繕コストの上昇等次第では積立金額の増額も考えられます。少なくとも当初の計画にかかる増額は計算に入れておいた方がいいでしょうね。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税は年に一度、不動産を持っている場合にはかかってしまう固定資産に対する税金です。都市計画税はかからない地域もありますが、基本的には街で住んでいるのであれば発生してしまうと考えてもいいでしょう。
固定資産税の税率=1.4%
都市計画税の税率=0.3%
これが基本的な税率となります。これを固定資産税評価額にかけて税金の計算するわけですが、そのまま計算すると、
土地の購入金額1,500万円×70%、建物の購入金額4,000万円×40%=固定資産税評価額2,650万円
2,650万円×1.7%(固定資産税・都市計画税)=45.05万円/年
となりました。かなり金額が大きいですね!マンションの購入者はみんなこれだけ税金を払っているのでしょうか、答えは×です。小規模住宅用地、要するに200㎡以下の住宅地については固定資産税は1/6、都市計画税は1/3に軽減が認められています。これで土地を計算すると
土地固定資産税=購入価格1,500万×70%×1.4%×1/6=24,500円
土地都市計画税=購入価格1,500万×70%×0.3%×1/3=10,500円
となります。でもマンションの場合購入金額が大きいのは建物です。それでは建物についてはどのようになっているでしょうか。一定の要件を満たしたマンション(中高層耐火建築物)は新築から5年間、固定資産税を1/2とすることが認められています。そこで、建物についても固定資産税、都市計画税を計算していくと、
建物固定資産税=4,000万円×40%×1.4%×1/2=112,000円
建物都市計画税=4,000万円×40%×0.3% = 48,000円
となりました。これらを全て足していくと、新築マンションの保有にかかる固定資産税・都市計画税は19.5万円/年となりました。月額で計算すると1.6万円/月程度になりますね。それでもそれなりの金額はかかってしまいますね。ちなみに建物はお伝えした通り5年で軽減措置が無くなりますので、そこからは固定資産税を払わなければなりませんので、6年目からは固定資産税の支払い金額は基本的に増えると思っていてください。ただし、住宅については基本的に劣化していきますので、劣化を計算にいれた、経年減価計数というものを考慮されます。この例で考えて行くと6年目で新築マンションの軽減措置はなくなりますが、経年減価も計算に入れると、新築時より、22.6万円/年と、1.41倍程度の金額となります。新築マンションの購入時には固定資産税もしっかり考えておきましょう。
火災保険
火災保険についてはマンションの場合、一般的にはそう大きな金額にはなりません。自分でかけていく火災保険は専有部分のみで、建物全体に火災保険をかけるのはマンション管理組合になります。一般的な建物評価金額、家財保険、地震保険を含めて補償を付帯した場合、通常は5年一括での支払いで契約をしていきますが10~15万円ほど2~3万円/年ほどになります。
ちなみに、地震保険については都道府県ごとに料率が定められており、都心部ほど高額になる傾向にあります。なお、火災保険についても現在は建物の築年数に応じて損害率が高いため、更新のタイミングで補償の削減が必要となったり、保険料の増額がなっています。
リフォーム代
リフォーム代については年単位で発生する費用ではありませんが、専有部分の内装や水回りについては自身で負担が必要となります。こちらについては別途ある程度積立等で準備をしておいた方がよいですが、どれくらいかかっていくかについては別記事であげていこうと思います。一般的に高額になるのは水回りの修理ですね。20~30年ほどで水道管が劣化してきます。
新築マンションで計算してみよう
以上のコストの年間維持費を新築マンションで計算していきましょう。
管理費17.3万円/年+修繕費9.6万円/年+土地固定資産税等3.5万円+建物固定資産税等16万円+火災 保険2.5万円=48.9万円
月額では4.1万円くらいでしょうか。これはもちろん維持費なので、住宅ローンの返済金額と別にかかる費用となりますが、こうして計算していくと非常に大きな金額ですね。5,500万円のマンションを頭金なし、35年、0.6%で借入した場合、一月の返済は14.5万円になりますから、維持費を込みで計算していくと住宅に19万円近くの支払いが必要となると考えていた方がよいでしょうね。
もちろん固定資産税や火災保険は年に一度もしくは5年に一度の支払いになりますし、修繕積立金の増額や6年目以降の固定資産税の増額もありますので購入の予算に不安がある家計の場合はしっかり事前に計算をしてから購入の検討をしていきましょう。
築10年の中古マンションを購入した場合
続いて築10年の中古マンションの場合はどうなるでしょう。購入金額は同様の場合で考えて行きます。
管理費17.3万円/年+修繕費15.3万円/年+土地固定資産税等3.5万円+建物固定資産税等19.5万円+火災保険2.5万円=58.1万円
月額では4.8万円程度ですね。あくまで、新築マンションと、中古マンションの評価金額が同じとした場合の計算になりますが、中古のマンションの方が、維持費は大きくなります。とはいっても、新築マンションも経年に伴って固定資産税、修繕積立金は増額されますので、マンションの購入タイミングの違いの結果ではあります。
終わりに
ここでは新築マンションと中古マンションの維持費についてみていきました。いかがでしたでしょうか。購入検討の際の一助になればと思いますが、実際には個別のマンションで状況が違いますので、個々に考えて行きたい場合は検討しているマンションがどのような物件なのか、マンション自体の値段だけでなく、維持費にかかる情報も併せて収集していきましょう。
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